Desire kiss


しかし。

この状況を打破する、決定的な声が階下から大きくなり響いた。


勝のお母さん。


「ちょっと、勝――ッ!早く起きなさい?」


いつまで寝ているの?と声が聞こえる。

霞んだ意識をはっとさせると、慌てて体を動かせた。


あの、頭から足のつま先まで甘い痺れは少しずつ消えていく。


終いには、とんとんと階段をゆっくり上がっている足音が聞こえて本格的にパニックに陥った。


勝は反射神経でそれを悟っていたが、既に迫ったこの音に諦めてしまっている。


極度の緊張感が襲い、今ままで築いてきた何かが崩れ去る気がして、ひどく胸騒ぎが襲う。

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