Desire kiss
「まあ、毎日無理すんなよ」
「大丈夫ですよ、中学校は無欠席でしたから!エネルギーだけはありますし」
母親がいない事を知っている石井先生に対して、元気よく答える。
母親がいないと長女が必然的に子供の面倒を見なければいけない。
大家族だからそれこそ大変だろうと気にかけてくれている。しかし、だ。
「お前国語の成績はいいくせして数学は殺人的にだめだよな」
「い、嫌味ですか!」
「本当のことだろ?まあこんなに差が出る奴も珍しいというか…」
「うう、現実を突き付けないでくださいよ」
「分からなかったら教えてやるよ。数学」
色々と忙しいだろうしなと先生は柔和に笑った。予想外な言い方に驚いて呟く。
「へえ…無慈悲で氷のように冷たい先生も優しいところもあるんだなあ」
「――…なんつった?」
「うわわ!心の声が!」
へへっと可愛く許しを乞うように、「冗談ですよ」と笑った。