Desire kiss
「私夕飯作るから終わるまで絶っ対にかたづけといてね!」
絶対に!をものすごく強調する。
我が食卓の夕飯の平均時間はほぼ十九時と決まっている。
皆がお風呂入らなきゃいけないし、お弁当のかたづけもしなきゃいけないんだから!
食材はあるか確認して台所を見上げる。
「にんじんはいるし…」
ああ、おばあちゃんがいてくれれば少しは助かるのになあ、とつくづく思う。
いつも二人で一緒にわいわい話しながら作っているのだ。
でもあいにく温泉旅行でいない。
とんとん、と包丁の音をならしながら考え込む。
頭で料理の手順を思い浮かべながらの作業だけど…
「いたっ」
自分にとっては珍しく包丁で手を切ってしまった。真っ赤な血が傷の部分からでてくる。馬鹿だなあ…と一人思った。