神龍の宴 覚醒の春
曖昧な、夢の続き。
繰り返し同じ夢を見る。


金色の髪、蒼い瞳のいとおしい人。


死なないでくれ、と叫び、抱き寄せられる腕の感触、そのぬくもり。


けして忘れはしない。


遠ざかる意識の底で、何度も呟く。


姿形は変わっても、絶対に忘れない。忘れないから、必ず私を見つけ出して。


愛しているわ、ハダサ。





その夢を見て目覚めた朝は、必ず頭が痛い。

凛(りん)はけだるげに、朝日が差し込む窓辺に目を向けた。

物心がついた頃から、いや多分、それよりも前から繰り返し同じ夢を見ている。
鮮明に思い出すのは、金色の髪と蒼い瞳をした、綺麗な顔立ちの青年…おそらく、ハダサという名前の男の顔だ。

夢の中の自分は女性のように思う。

だからなのか尚更、目覚めた後は自分が自分でないような、不可思議な感覚に陥ってしまう。


桐生 凛…16歳。今年の春、高校2年になった。


ふと、隣のベッドを見るとそこは既にカラだった。双子の兄、爽(そう)はとっくに下に降りたらしい。
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