神龍の宴 覚醒の春
けれどそんなある日。
ハダサと父が視察に訪れていた時に、孤児院でテロが起こった。
ハダサは咄嗟にアデュスをかばい、半ばそのどさくさに紛れてアデュスを屋敷に連れ帰った。
以来、アデュスが声を取り戻すまで献身的に寄り添い、周りの反対も押しのけ、成熟した二人は今や相思相愛の仲である。
身分違いで周りから認められず結婚には到らないが、ハダサはアデュスと事実婚の生活を送り、アデュスは長じて植物学専門の博士となり、国の機関で農作物の品種改良のプロジェクトを任されるほどの才女となった。
「生きていたとは心外だったか?」
ハドル・シンと名乗ったアナストリアは、呆然と立ちすくむハダサに問い掛けた。
16年前、孤児院がテロにあった。
その時、不幸にも多くの犠牲者が出て、アナストリアも巻き込まれて亡くなったものと思われていた。
当時、反抗声明はエフォナの反政府組織が出していたと思うが……。
「あのテロの折、俺はエフォナに流れた。以来16年。片時も忘れた事はない。ハダサ……貴殿のことも、アデュスのことも」
アナストリアは片方の赤い瞳に憎しみを込めて呟いた。
「アデュスは返してもらう。返してもらうよ、ハダサ」
と。
ハダサと父が視察に訪れていた時に、孤児院でテロが起こった。
ハダサは咄嗟にアデュスをかばい、半ばそのどさくさに紛れてアデュスを屋敷に連れ帰った。
以来、アデュスが声を取り戻すまで献身的に寄り添い、周りの反対も押しのけ、成熟した二人は今や相思相愛の仲である。
身分違いで周りから認められず結婚には到らないが、ハダサはアデュスと事実婚の生活を送り、アデュスは長じて植物学専門の博士となり、国の機関で農作物の品種改良のプロジェクトを任されるほどの才女となった。
「生きていたとは心外だったか?」
ハドル・シンと名乗ったアナストリアは、呆然と立ちすくむハダサに問い掛けた。
16年前、孤児院がテロにあった。
その時、不幸にも多くの犠牲者が出て、アナストリアも巻き込まれて亡くなったものと思われていた。
当時、反抗声明はエフォナの反政府組織が出していたと思うが……。
「あのテロの折、俺はエフォナに流れた。以来16年。片時も忘れた事はない。ハダサ……貴殿のことも、アデュスのことも」
アナストリアは片方の赤い瞳に憎しみを込めて呟いた。
「アデュスは返してもらう。返してもらうよ、ハダサ」
と。