神龍の宴 覚醒の春
エフォナは領土こそ広大だが、実はそのほとんどが砂漠化しており、GNPはハダサ達の属するカストリア共和国とは比べものにならないくらい低い。



武力にモノを言わせて砂漠化から逃れるように国土を広げてきたが、急務は国内の食料の生産量を上げることである。



これは諸国も把握している実情であった。


「カストリア共和国国立研究所主任のアデュセス・リーン博士の身柄を預かりたい。そちらが進めている、砂漠でも収穫可能な農作物についてのノウハウを博士から賜りたいのだ。この用件さえ呑んでもらえるなら、エフォナはカストリアの国境から兵を引く。なおかつ、こちらが保有する最新兵器の研究をカストリアに譲渡しよう」



アナストリアはそう言って、意味深に笑った。



「悪くない条件であろう?ハダサ・ドゥアス准将」



ハダサの心臓が早鐘のように鳴り出した。


国難を乗り切るために、アデュスを手放せとアナストリアは言っているのだ……。


ハダサはギュッと拳を握り締めた。


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