神龍の宴 覚醒の春
桜の舞い散る学校までの通りを、凛はぼんやりと歩いていた。


頭痛は落ち着いて来たが、心は重たいままだ。


今日やって来る少女の事を思うとやりきれない。


凛達の母親もそうだった。

年端もいかぬ少女の頃から結婚相手を決められ、20歳そこそこで大学に籍を置きながら長兄の暦を産んだと聞いている。


父は当時から海外にいる事が多く、母はたくさんの子供には恵まれたが、あまり幸せではなかったと思う。

幼い頃から見続けている夢の影響もあるかもしれないが、凛は両親とは違った人生を送りたいと思っている。


愛し愛されて、生涯にただ一人、この人と決めた人と人生を歩きたい。


それが凛の切実な願いだ。

「凛」



背後からポンと肩を叩かれ、凛は我に返った。


見ると幼なじみの真耶子が息を切らして立っていた。


「あれ、爽は?」


「とっくに着いてるんじゃないかな。俺より随分早く出たし」


「ふーん。最近、あんまり一緒にいないのね」


「…まあね…」


凛は上の空で答える。


「あ、ねぇ。私たち、また今年も同じクラスだって」

「あれクラス発表、もう見てきた?」





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