神龍の宴 覚醒の春
そんな真耶子の背中を軽く叩いて、凛は小走りに駆け出した。

新しい教室からは、校門の桜がよく見えた。


風が吹く度に満開の桜がはらはらと散る。


桜は散るからよいのだとわかっていても、凛は散らない桜が作れないものかと考える。

はっきりとどうすればよいのかはわからないが、夢想するうちに作れそうな気がしてくるから不思議だ。


昔からそうだった。


枯れない花を作りたいとか言っては、「花は散るから綺麗なのよ」と母親に優しく諭されていたものだ。


母がいた頃、庭には温室があった。


そこで母と一緒に花の手入れをしていた幼い頃が懐かしい。









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