神龍の宴 覚醒の春
「私、エフォナに行こうと思うの」


アデュスはその時、エフォナ行きをなんでもない事のようにサラリと言った。



「…軍から、知らせがあったのか?…」


ハダサが帰宅すると、アデュスは温室にいた。

白衣姿で髪を無造作に束ね、しゃがみ込んで何やら黙々とメモを取っている最中だった。


その顔は泥だらけだったが、アデュスの横顔は相変わらず美しかった。


アデュスは新しい花の苗をチェックしながら、あえてハダサの目を見ないようにして話を続けた。



「国賓待遇なんでしょう。エフォナの現状は前から気になっていたの。研究所も好きに使えるみたいだし、助手も連れて行けると言うから、悪くない条件だと思ってるわ」



ハダサはたまらず、アデュスの前に回り込んだ。


「アナストリアの元に行ったら、もう二度とこちらに戻って来れないかもしれないんだぞ」


「大丈夫よ。アナストリアとは、元は幼なじみなのよ。私を殺したりしないわ」」





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