神龍の宴 覚醒の春
戦わずして、犠牲をださずしてエフォナとの紛争にケリがつくなら、カストリアはアデュスを手放す。


多くの命を、一人の学者と引き換えになんかできるわけがない。


ハダサだってよくわかっている。


これはハダサやアデュスの意志ではどうにもならない事なのだ。



わかっていても、理性が追いつくはずもなかった。



ハダサはその夜、何度も何度もアデュスを求めた。


アデュスも、ハダサの求めに無言で応じた。


いっそこのまま、夜が明けねばよいのに。


一つに重なりあったまま、離れられなくなればよいのに。


何度めかの交わりの後、アデュスはハダサの耳元に小さく囁く。


「愛しているわ…ハダサ…」



ハダサは答える代わりに貪るような口づけを返した。


息苦しいのに、また体の芯が熱くなってゆく。


愛してる。



何処にいても、どんなに遠く離れても、この気持ちだけは変わらない。



たとえ生まれ変わったとしても。



この気持ちを無にすることなどないだろう。



ハダサはアデュスの、全てなのだから…。


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