神龍の宴 覚醒の春
爽が凛を馬鹿にしたように言う。
凛は鼻白んで言葉に詰まった。


桐生家には5人の息子がいる。


長兄の暦(れき)は大学を中退して勘当され、以来、一人で暮らしている。


次男の開、そして双子の爽と凛、それに今まで母と暮らしていた弟の勢(せい)。


父は名のある大会社の一人息子で、今はアメリカに拠点を移しているので、滅多に日本には戻って来ない。

母は政略結婚で桐生家に嫁ぎ、5人の子を成したが10年前に出て行った。


離婚はしてないが、夫婦としてはとっくに破綻している。


凛のよき理解者だった長兄の暦は、勘当された手前この家には寄り付かないし、いくら経済的に恵まれていても、ただでさえ凛には落ち着かない家だ。


そこに増える同居人が、まだ幼いとはいえ思春期の少女であることは、ある意味凛の理解の範囲を越えている。





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