極上ブラザーズ!!(仮)


「ねぇ」

翔君の声が少し冷たい。


「お前、これからどうするつもりなの?」

ぱっと手を解かれて、
私は自分の手の居場所が分からず少し戸惑った。

ちょっと、いやかなり、寂しい。


「え……どうするって?」

しどろもどろになりながら尋ねると、
翔くんは綺麗な顔を歪めた。


「あいつ。何者なわけ?」
「……颯太くんは、その。予備校で出会った初めての友達で、えっと……」

「あいつとお前の馴れ初めなんてどうでもいいんだけど?」
「……ごめんなさい」
「別に。何かお前さ、いつも面倒事に自分から首突っ込んでる気がする」
「……そんなこと、ない、と思う」
「そう?ふうん」

「……そんなことないから……」


私が顔を下に向けると、ぎゅっと温かい感触が戻る。


「お前さ、歩くの遅い」


そう言いながらも、繋がれた手が優しい。自然と顔がニヤけてしまった。


「……こんな時にヘラヘラ笑えるお前って正真正銘のバカだよね」
「鈍感な人に言われたくないもん」
「はぁ?」


2人で歩く帰り道はすごく新鮮で。
翔くんに彼女さんがいるって現実がありながらも、
それでも、すごく幸せだった。


なんでだか、
翔くんが隣にいると、

心が暖かくなるの。


なんて言ったら、さっきみたいに顔を歪めちゃうのかな。
……そんな顔でも見たいと思う私はきっともう、どうかしてる。

< 161 / 169 >

この作品をシェア

pagetop