極上ブラザーズ!!(仮)
「翔は黙ってていただけますか?僕はこの居候娘と、契約をしているので」
「――遼。見損なった」
「何とでも言えばいいです。僕の恐れていたことが起こった」
「……」
目の前で繰り広げられる会話に私は聞いているしかなかった。
翔君が悲しそうな顔をしていて、
遼さんは何故か楽しそうな――それでいて少し寂しそうな笑顔を浮かべている。
契約なんてした覚えない!
そう言いたくても言えない自分が嫌で、翔君が悲しそうにしているのはもっと嫌だった。
「昔と同じ繰り返しなんて嫌なんですよ」
「そんなことないっ!俺は――別に……」
「ねぇ。翔、君は11年前もそう言っていましたね。そうやって君は僕が欲しいものを奪うのが上手です、あの日も……」
あの日って?
疑問に思っていると、目の前に遼さんの顔があった。
綺麗な瞳なのに濁って見えるのは、私の気のせい、なのかな……。
「来なさい」
「え?」
「早く、来なさい!」
ぐいっと強い力で、引っ張られる。
ふと、翔君を見ると泣きそうな、諦めたような表情をしていて胸が痛くなった。