【完】TEARS−ティアーズ−
「もしもし、お兄ちゃん!?」
《お、乃亜? どうした?》
「ねぇ、お兄ちゃん! 心臓のことってわかる?」
《はぁ? 何だよ急に。なんか病気か?》
「わかんないんだけど、心臓が痛くなるの。
ドキドキしたり、チクチクしたり。
なんていうのかなぁ……
ムズムズして痒くなったりするんだぁ」
《は? お前、それって……》
お兄ちゃんが言うのを止めた瞬間。
やっぱり病気なんだ、そうわかってしまった。
言いにくいような病気で、あたしの命は……後どのくらいなんだろう。
「お兄ちゃ〜ん。あたし助からないのかなぁ?」
《恋、だろ》
泣きそうになっていたあたしの目から涙が消えたのを感じた。
だって、今。
な、なんて?
《だから、それは恋だろ》
え?
恋?
あたしが?
誰に?
そう思いながら、目にうつったのは郁君で。
その瞬間、あたしの胸はまたドキドキと大きく音をたてた。