【完】TEARS−ティアーズ−
「はぁ!?」
眉間に皺を寄せながら目を数回パチパチさせるのは、サッカー部のマネージャー宮坂ユミ。
一応、俺。
沢木 郁(サワキ イク)の、彼女らしい。
「一緒の大学行くって、ユミと約束したじゃない!
それを今更行かないって、どういうこと!?」
一息でそう言い終え、勢いよく息を吸う宮坂。
昨日土砂降りだった雨がいつの間にか止んだ、涼やかな空気が澄み渡る朝。
サッカー部の朝練がはじまる前に、彼女から声をかけられた。
たいして喋ることもないし。
朝練までは時間もあったし。
何となく思い出して、
『大学に行かずに就職する』
とたった今、言ったところ。