【完】TEARS−ティアーズ−
――ガッシャン!!!
大きな音と共に、近くにあった自転車が倒れた。
は?
音に驚いた俺がそっちに顔を向けると、自転車の間からふわふわした栗色の長い髪が見えた。
誰だ?
「えっ。なに!? やだっ」
そう小さく叫んだ宮坂が、俺の隣を走り過ぎる。
「あー……」
宮坂を呼び止めようと思ったけど。
一瞬のうちに色々考えた俺は、やめておく事にした。
『宮坂とはこれ以上付き合うつもりはない』
って、ハッキリ言っておくべきなのかもしれないけど。
どうせ、面倒なことになるだけっぽいし。
もう、いいや。
大学に行かなきゃ別れるとか言ってたし。
俺は大学には行かねぇし。
問題ないだろ。
それにしても鈍臭ぇ女だなぁ。
ゆっくりと歩きながら、転んでいる女の前に立った。
その女は下を向いたまま動かない。
なんだ?
どっか怪我でもしてんのか?
その女の顔を覗き込もうとした時だった。
「いっ…」
い?
そんな声が聞こえた瞬間、顔をあげた女は俺に気付いて、ハッとした表情を見せた。