【完】TEARS−ティアーズ−
目が合った女の大きな瞳は、人形みたいにクリクリしてて。
朝の光に透けた髪は綺麗な栗色に輝いていた。
こんな女……学校に居たっけ?
急にニヘッと微笑んだ女は、何事もなかったように立ち上がり。
すげぇ速さで自転車を起こすと、足早にその場を去ってしまった。
な……何だ?
変な女だなぁ。
首を傾げながら、少し眉間に皺がよる。
必死に走って行く女の背中が小さくなってきた頃。
あっ! そういやぁ時間!
ふと時計に目をやると、既に朝練の集合時間ギリギリで。
げっ。
まじかよっ!
スポーツバックの紐を肩にかけ直した俺は、慌てて部室へと走った。