【完】TEARS−ティアーズ−
「ねぇ、ママ」
「……」
「どこ行くの?」
「……」
「ママってばぁ!」
「……静かに乗っていなさい」
もぉっ!
隣に座るママは表情一つ変えないで前を見ている。
そんなママを睨んだあたしは、小さく溜息を吐くと窓の外を眺めた。
朝、急に部屋に入って来たママに用意をするように言われて。
着替えたら、すぐに車に乗せられた。
今日はどこかへ行く予定なんて、なかったはずなのに。
一体どこへ行くつもりなんだろう。
ママは全然、教えてくれないし。
どうしたのかなぁ。
窓の外に映る景色を見ていたら、気がついた。
「あ! 食事?」
外には、いつもパパとママと食事に行くときに見るビルが沢山あって。
「……そうよ」
なんてママの言葉。
「なーんだ。それなら言ってくれたらいいのに」
わざわざ隠す必要なんてないよね?
あ、でも。
「今日ってパパお休みだったの?」
うちは家族で外食が基本で。
多忙なパパをおいて、外で食事なんて滅多にしない。
「パパはお仕事よ」
「ふーん」
珍しいな。
あー、お昼だしランチだもんね。
たまには、ってことなのかな?