【完】TEARS−ティアーズ−
「まぁ、高峰君がいるし、そこまで煩く言うつもりはないけど」
ママの声が高くなった。
「あ、もちろん。それは高峰君とお付き合いする事が大前提のお話しよ?
高峰君とならママだって安心出来るし、パパも喜んでるわ」
また……高峰さんか。
「乃亜だってわかってるわよね」
あまりの威圧感に、あたしは何も言えなかった。
意味はわかるよ。
今のまま大学に上がるなら、無理して勉強しなくていいし。
あたしにとっても良いことだってことくらい。
だけど、それは高峰さんとの事があるからで。
もし、高峰さんとの事をお断りしたら……。
うう……考えるだけでもゾッとしちゃう。
だけど将来の事なんて、まだわかんないんだもん。
周りの子達は夢を持ってて。
それを現実にする為の努力をしてる。
けど、あたしにはやりたい事もなりたいものも、将来なんて全く考えていない。
こんな時期になっても、あたしがこんなだからママが心配するのはわかるんだ。
わかるんだけど、やっぱりあたしはわかんない。