【完】TEARS−ティアーズ−


「会いたかったんだ」

「へ?」

「乃亜ちゃんと、ちゃんとデートしたかったんだよ」



カーッと顔が熱くなってしまった。

そんなストレートに言われたら……何も言い返せなくなっちゃう。



「とりあえず食事しない?」

「え?」

「凄く良い席を予約してあるんだ」

「えっと……悪いんですけど……あ、すみません」



断ろうとしたと同時に、タイミングよく鳴った携帯。

相手はママで。



《高峰君とは会えた?》



なんて弾んだ声。



「ママ、これはどういう事なの? あたし聞いてないよー」

《言ってないもの。それより会えたのね、よかったわ》



悪びれた様子もなく話すママにイラッとしちゃう。



「よかったじゃないよ。こんなの困るよ!」

《どうして困るの?》

「だって……」

《さっきママ言ったわよね。高峰君とのことが大前提だって》

「う……」

《今日もお断りして勝手に帰ってきたら、今度こそ家庭教師つけるからね》

「え? ママ!?」

《それが嫌なら、高峰君とデートしてくるのよ? わかった?》



最悪過ぎる。

高峰さんと勉強を天秤にかけるとか……普通の親がすること?


ママったら、本当に何考えてるのよ!!
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