【完】TEARS−ティアーズ−
切れた携帯を見つめるあたしに、
「乃亜ちゃん、大丈夫?」
と後ろから心配そうに聞く高峰さんの方を、ゆっくりと振り返った。
ぜっんぜん! 大丈夫なんかじゃないけど!
「は、はい」
って言うしかない。
だって、家庭教師なんてつけられたら家から一歩も出られなくなる。
高校受験の時の地獄の日々を思い出した。
中学2年にあがる時、あまりの成績の悪さにママが激怒しちゃって。
通っていた塾にプラスして、つけられた家庭教師の先生。
塾だけでも大変だったのに、家庭教師の先生までつけられたあたしは、
起きて、学校へ行って、帰って、ご飯食べて、お風呂に入って、寝る、
以外の事は何も出来なかったんだ。
自由に出来る時間なんて、本当にないんだよっ。
学校の休み時間でさえ、塾と家庭教師の先生に出された宿題をやらなきゃ間に合わないんだもん。
あんな地獄の日々だけは嫌。
絶対に嫌!!
「そう? なら行こう?」
「……はい」
しぶしぶ頷いたあたしは、高峰さんに着いて行く。