【完】TEARS−ティアーズ−
「わぁ……凄い」
予約された席に着いたあたしは、思わず声が出てしまった。
それくらいに景色が綺麗で。
夜景ならパパとママと来た時に何度も見たことがあるけど。
お昼っていうのはなかったかもしれない。
「この席、お昼は人気があるんだよ」
「へぇ。誰かと来たことあるんですか?」
「ううん、僕も初めて。医局の人に教えてもらったんだ」
ニッコリと笑う高峰さんに、あたしもつられて笑ってしまった。
あ、何いっしょになって笑っちゃってんだろ。
早く食べて、早く帰ろう。
うん、それがいいよね。
「乃亜ちゃんが喜んでくれて良かった。
こういうお洒落なところって普段あまり来ないから」
そうなんだー。
なんか意外だな。
高峰さんって、こういうところばっかりで食事してそうなイメージだもん。
「それに若い子の趣味とかもわからないしね」
若い子の趣味ってっ。
その言葉に思わず笑ってしまった。
「え? 何で乃亜ちゃん笑ってるの?」
「だって、若い子なんて言うんだもん。高峰さんおじさんみたいです」
「お、おじさん、かぁ……」
「あ、すみません」
遠い目をした高峰さんに気付いて、慌てて謝った。
また言わなくて良いことを言っちゃったあたしは、後悔。
さすがに“おじさん”はないよね。
悪い事言っちゃったかな。