【完】TEARS−ティアーズ−


「いや本当のことだし、気にしないで。
それに乃亜ちゃんが笑った顔見せてくれたの初めてだしね」



そうだったかなぁ?

そんなことないと思うんだけど。

首を傾げたあたしに、高峰さんは笑って頷いて。



「こうして食事出来てよかったよ。
帰っちゃうんじゃないかって内心ヒヤヒヤしてたんだ」



……。

ついさっきまで。

ママから電話があるまでは、そう思ってました。なんて言える訳もなくて。

ニッコリと笑った顔は、引き攣っちゃったかもしれない。



「さっきの電話もおかあさんからでしょう?」



え?

なんで知ってるの?



「あはは。乃亜ちゃんはわかりやすいなぁ。
本当は帰りたかったのに、おかあさんに言われて仕方なくここにいる、そんな顔してるよ」



えっ。
嘘!?

パッと顔に両手を当てると、高峰さんはまた笑って。



「本当に嘘吐けないよね」



なんて。

あたしは大嘘吐きなんだよ。

高峰さんは本当のあたしを知らないんだ。

ああ、あたし高峰さんの事を責める事なんて出来ないんだった。

今日、あたしを騙してこんな所に連れてきて! ってさっきは思ったけど。

あたしは、もっと酷い事をしてる。

高峰さんに、酷い嘘を吐いているんだもん。
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