【完】TEARS−ティアーズ−
「そんな乃亜ちゃんだから好きになったんだけどね」
その言葉に目を見開いた。
だ、だって、そんなハッキリ言われたら。
誰だって驚くよ。
「た、高峰さん!?」
「まだ帰りたい?」
そう言った顔が、あまりにも切なそうで。
あたしは何も言えずに、目の前に出された料理に手を伸ばした。
正直、味なんてわかんない。
帰りたいとは、思うけど。
あたしに会いたかったから、こうしてこんな素敵なところまで予約してくれてた高峰さんの気持ちを思うとハッキリは言えないよ。
“僕の事を見てよ?”そう言った高峰さん。
“高峰さんの事も少しは見てみたら?”そう言った南ちゃん。
高峰さん事を見るって、どういう風に見ればいいんだろう。
ちゃんと見たら、あたしは何か変わるのかなぁ?
郁君を好きな気持ちとか。
そういうのは、なくなっちゃうのかな。
なら、それはあたしにとって良いこと?
あたしの片想いは、多分最悪な片想いなんだと思う。
好きって想っても届かない想いで。
郁君には、すでに振られてるし。
それに綺麗な彼女もいるんだよ。
よく考えれば。
答えは出ているのに。
まだ好きで片想いを続けるだなんて不毛だよね。