【完】TEARS−ティアーズ−
「こういう日は散歩したくなるよね」
「あ、はい」
「最近、病院に篭ってばっかりだったから、体伸ばしたいなぁ」
「あ、はい」
「……乃亜ちゃん、付き合ってくれる?」
「あ、はい」
「公園で散歩でいいかな?」
「あ、はい」
「本当?」
「あー、って、え?」
ちゃんと話を聞いてなかったあたしが悪い。
悪いんだけど、何の話してたんだっけ?
お天気の話はしたような、気がするんだけど。
そうこうしているうちに着いたのは公園で。
高峰さんの車で家に送ってもらうつもりが、何故か車は公園の横で停車した。
「んー!! やっぱり太陽はいいねー」
外で伸びている高峰さんにつられるかのように、あたしも車から降りた。
「公園……ですか?」
家の近所にある大きな公園。
春には桜の並木道があって、お花見客も少なくない。
冬にはイルミネーションを飾っていて、夜通ると綺麗で。
「うん。少し散歩しよう」
ああ、思い出した。
さっき散歩したくなるって言ってたよね。
だから公園なんだ。
あたし、うんって返事しちゃったもんね。
はぁー、と重い溜息が漏れた。
うん。って返事したのはあたし。
だから仕方ないんだけど。