【完】TEARS−ティアーズ−
「僕のこと嫌いなのかな?」
「嫌いじゃ、ないです」
高峰さんの事を嫌いだなんて思った事は1度だってないよ。
「そっか、それは良かった。
なら、おかあさんに無理矢理決められたから反抗してるとか?」
「そういうのでも、ないと思います」
別にママが決めてきた相手だから嫌!
なんて思ったことはない。
ただ、
「勝手に決められちゃうのは、嫌です」
そう、それだ。
あたしの気持ちなんて全く無視して。
勝手に将来まで決められたのが嫌で仕方なかったんだ。
「そっか。なら僕にもチャンスはあるよね。
乃亜ちゃん、順番がおかしくなっちゃったけど、今からスタートしてみない?」
「え? 今からスタート?」
「そう。ちゃんと言ったことなかったね。
僕と付き合ってみないかな?」
そう言われた瞬間だった。
サワサワと爽やかな風が吹いて。
目の前の高峰さんを見つめていたはずなのに。