【完】TEARS−ティアーズ−


そう思ったのに。

関係ないって、そう思ってたのに。



俺の足は走り出していた。



何か考えたわけじゃない。

それどころか何も考えてすらない。

こういうのを本能っていうんだろう。



気付けば、車に乗り込もうとする篠原の腕を掴んでいた。



「え? い、郁君!?」



素っ頓狂な声をあげた篠原は、大きな目を丸くしてて。



「ど、どしたの!?」



久々に俺をちゃんと見た目と。

久々に俺に向けられた声に。


こんな無茶苦茶な状況でも、それを嬉しいと感じてしまう俺が居た。
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