【完】TEARS−ティアーズ−
「ううん、バレてないよ」
「……なら、なんで?」
「え?」
「……お前の意思で、車に乗ろうとしてたわけ?」
「あ、うん」
「なんだ、それっ」
はきすてるように言うと、郁君はあたしの手を離した。
急に冷えていく、掴まれていた手が寂しくなる。
「俺は、バレて無理矢理付き合わされてんのかと思って……」
「そっか、だから助けてくれたんだ」
「……ああ」
「……ありがとっ」
郁君の目を見て笑うと、郁君は口元に手をあてて目を逸らしてしまった。