【完】TEARS−ティアーズ−
すっげぇダサイ事をして、数日。
情けないくらいにダサ過ぎて、思い出す度に恥ずかしくなる。
あの時、篠原が高峰の車に乗ろうとしたのを見た時。
俺の頭の中は真っ白になった。
気付けば篠原の手首を掴んだ俺が居て。
気付けば高峰から連れ去った俺が居て。
そこまでした時、俺は自分のした事に驚いた。
だって、そうだろ。
女なんて面倒で。
もう付き合ったりなんてしないとか思ってたくせに。
篠原の事だって、関係ないって……あれほど思ってたくせに。
俺は、高峰って男に嫉妬したんだ。
篠原の
鈍臭ぇとことか、
バカなところとか、
よく転ぶところとか、
めちゃくちゃな行動とか、
俺に向ける笑顔にドキドキした理由も、その時に気がついた。
篠原の事が好きだったからなんだって。
だから、篠原が高峰に告白されてるのを見た時も腹が立って。
だから、正宗に篠原に彼氏が出来るかもって言われた時も焦って。
だから、高峰の車に乗ろうとした時も……。
俺はちゃんとした恋をしたことなんてないから。
わからなかったんだ。
こういう気持ちを好きっていうんだって事も。
こういう気持ちを嫉妬っていうんだって事も。
今まで、なんで付き合う必要があるんだ? そう思ってた。
だけど、なんとなくだけど……その理由が少しわかった気がした。
俺は高峰に篠原をとられたくなかったんだ。