【完】TEARS−ティアーズ−
--ピー!!!!!
気がつけば、長く鳴る笛の音。
「お疲れ様でしたー」
って低い声がグラウンドに響き渡る。
サッカーの練習中でさえ集中できない俺は本当に、どうかしてる。
汗を拭いながら、足元にあったボールを蹴り飛ばした。
部室へと戻ると、
「おお、マジかよー」
先に戻ってた仲間が騒いでいた。
「なに? なに? どうしたのー?」
そこに加わるのは正宗で。
「こいつ、好きな子が出来て告るんだってー」
「おおー、青春だねぇ!」
って、お前はオッサンかよ!
着替えながらも、俺は心の中で正宗に突っ込んでしまう。
「でもさぁ、タイミングがわかんないんだよね」
「タイミングかぁ~」
「勢いしかないんじゃね?」
「そうなんだけどさー。
勢いでいくと失敗しねぇ?」
「あるある。
確かにダサイ事はしたくないよな」
「うんうん、ダサイ男とか思われんはマジ嫌だよなぁ」
別に俺の事を話してるんじゃないことは、わかってる。
正宗にだって言ってないし。
誰も俺が篠原に、あんなダサイ事をしただなんて知らない。
だけど今の俺には、その言葉が心臓にグサグサと突き刺さる。
だって……今の俺は、それで凹んでるんすけど。