【完】TEARS−ティアーズ−
部室から出た俺は、足早に自転車置き場へと向かう。
時計を見るとすでに19時半を過ぎていた。
そんな中、誰もいない通路でキョロキョロと辺りを見回してる女の後姿が見えて。
ん?
誰か捜してんのか?
そう思いながら、歩いていた俺はライトに照らされたその女の顔を見て、足が止まってしまった。
え?
篠原?
ふわふわした栗色の髪がライトに照らされて、いつもより明るい気もしたけど。
ちっこい小動物のような、あの動きは間違いなく篠原で。
え、もしかして……。
俺の事待っててくれた。とか?
そう思ったら、俺の心臓は急に大きな音をたて始めた。
うっわ、なんだこれ。
胸の辺りをギュッと掴んでみると、掴んだ手に振動を感じて。
ヤバイ……めちゃくちゃ緊張してる。
篠原へとゆっくりと一歩足を進めた瞬間、篠原は自転車置き場へと向かって歩き出した。
は?
待ってたわけじゃねぇの?
なんだよ……。
勝手に期待してしまった俺は、一気に落胆して。
そして次にきたのは、恥ずかしさ。
俺の事待っててくれたとか自惚れた自分自身に、赤面してしまう。