【完】TEARS−ティアーズ−
はぁーっと大きな溜息をひとつ吐いて。
その後に、大きく息を吸った。
そして、
「帰んの?」
そう篠原に声をかけたんだ。
「え? あっ! い、郁君」
振り返った篠原の表情を見て、さっき一瞬で消えた期待が再び戻ってきてしまった。
「俺を待ってたんじゃないんだ?」
そんな自信ありげな言葉が言えてしまうのは、篠原のせい。
「べっ、別に、待ってたわけじゃないよっ」
「ふーん」
「だ、だから別にっ……」
そう俯いた篠原の顔は薄暗くてもわかるくらいに、真っ赤で。
俺でもわかる。
待っててくれたんだって事くらい。
だけど、そんな必死で否定しなくてもよくね?