【完】TEARS−ティアーズ−
「いつからって、俺なかったことにしてって言っただろ?」
「いつ~?」
「だぁかぁらぁ! お前が高峰の車に乗ろうとした時」
「あれって……そういう意味だったの!?」
肩から、スポーツバックのショルダーがズレた。
こいつ、もしかしてわかってなかったのかよ?
いや、もしかしたらそうかな? って思った時もあったけど。
ハッキリ言わなかった俺も悪いけど。
さすがに、もうわかってるだろって思ってたんすけど。
「そういう意味以外、何があるんだよ?」
「わかりにくいよー。郁君のバカー」
バカって。
お前がバカなんだろうが。
あれから、かなり経ってるぞ?
俺なりにけっこう努力してきたつもりなんだけど。
一緒に帰ったり、電話したり、メールしたり。
こうしてデートしてみたり。
それなのに、
今の今まで気付かなかったのか……こいつ。