【完】TEARS−ティアーズ−


「いつからって、俺なかったことにしてって言っただろ?」

「いつ~?」

「だぁかぁらぁ! お前が高峰の車に乗ろうとした時」

「あれって……そういう意味だったの!?」



肩から、スポーツバックのショルダーがズレた。


こいつ、もしかしてわかってなかったのかよ?


いや、もしかしたらそうかな? って思った時もあったけど。

ハッキリ言わなかった俺も悪いけど。


さすがに、もうわかってるだろって思ってたんすけど。



「そういう意味以外、何があるんだよ?」

「わかりにくいよー。郁君のバカー」



バカって。

お前がバカなんだろうが。



あれから、かなり経ってるぞ?



俺なりにけっこう努力してきたつもりなんだけど。

一緒に帰ったり、電話したり、メールしたり。

こうしてデートしてみたり。



それなのに、

今の今まで気付かなかったのか……こいつ。


< 301 / 371 >

この作品をシェア

pagetop