【完】TEARS−ティアーズ−
「篠原さん」
放課後、サッカーをする郁君を見ながら待っていたあたしを呼ぶ少し高めの声が聞こえた。
その相手はサッカー部のマネージャーさんで。
郁君の彼女さんだった、宮坂ユミさんだった。
え?
宮坂さんが、どうしてあたしを?
辺りをキョロキョロと見回しても、あたししか居ない。
「篠原乃亜ちゃんだよね?」
そうハッキリと名前を呼ばれて、あたしは頷く。
ニッコリと優しい笑みを浮かべた宮坂さん。
「ちょっといいかな?」
「あ、はい」
あたしが返事をすると、宮坂さんはあたしに近付いて来て。
「ここからだと、よくサッカーの練習が見えるね」
ふふっと優しく笑う、その姿はまるで絵みたい。
宮坂さんを間近で見るのは初めてなんだけど、本当に綺麗な女の子で。
すらっとしてて、モデルさんみたいな人だ。
あたしも後少し背が欲しかったなぁ。
ぽぅっと宮坂さんを見つめていたら、
「あのね、郁君の事なんだけど」
出て来た名前にドキッとしてしまった。
「最近、郁君と仲良いんだってね」
「えっ?」
「篠原さんと、郁君はどういう関係なのかな?」
思わず、息を呑んでしまった。