【完】TEARS−ティアーズ−


「篠原さんと郁君が、噂になってるみたいだから気になっちゃって」

「え? 噂?」

「うん。郁君と篠原さんが付き合ってるって」



ええっ。

そうなの?


あ、この間の正宗君達かなぁ?

だけど、あたしとの事なんて噂にする必要ない気もするんだけど。


あ、そっか!

郁君が、噂になるんだ。

郁君はカッコイイし、当然モテるよね。

相手があたしなんかとだったら、噂にもなるかもしれない。


うう……郁君に悪い事しちゃってるかもしれないよぉ。



「うちのサッカー部って凄く強いんだ」

「あ、うん」

「だから高3になっても皆頑張ってるのね。
でも最近の郁君は篠原さんが待ってるからって、すぐ帰っちゃって。
監督が凄く怒ってるんだよね」



……え?

あたしの為に?



「郁君は本当にサッカーが好きで上手いのね。
だからサッカーの有名な大学から推薦もいっぱい来てるくらいなんだよ」



そうなんだ……。


郁君がサッカーを好きなのは知ってたけど。

そこまで凄かったなんて知らなかった。



「だけど篠原さんのせいで、次の試合出させてもらえないかもしれないの」

「えっ?」

「でも郁君はうちのエースだし、私は絶対に出てもらいたいんだ!」



宮坂さんの目には薄っすらと涙が溜まってて。



それを見た瞬間、あたしの胸の奥がザワザワと音を立てた気がした。
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