【完】TEARS−ティアーズ−


「どこまで知ってるかはわからないんだけど。
私と郁君、付き合ってたんだ」



今度は、ドキンッて胸が嫌な音をたてる。



「でも、くだらない事でケンカしちゃって。
そのまま自然消滅みたいになっちゃったんだよね」



……え?

ちょっと待って?

今、なんて?

自然消滅?


郁君と宮坂さんって、ちゃんと別れたんじゃないの?



「ケンカの原因っていうのもね……。
郁君が同じ大学に一緒に行く約束したのに、行かないで就職するって言い出した事なんだ」



ああ、そういえば郁君、就職するって言ってたもんね。

だけど同じ大学に行くか、行かないかが……ケンカの理由?


たったそれだけ?



「ね、くだらないでしょう?」



そう微笑む宮坂さんに、あたしの顔は引き攣った。



「あ、ごめんね。
余計な話しちゃったね」

「あ、ううん」

「私は郁君にサッカーを頑張って欲しいんだ。
でも……こんな言い方は良くないかもしれないんだけど……」



少し躊躇った後、宮坂さんは真っ直ぐあたしの方を見て、



「今の郁君には篠原さんと付き合うことは、マイナスになってる気がする」



そう言った。
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