【完】TEARS−ティアーズ−


朝練が終わって、俺は片付けをしている宮坂の側へと向かった。



「宮坂」



そう声をかけると、宮坂は一瞬驚いた顔を見せた後。

ニッコリと微笑んだ。



「おつかれ。
なんか久しぶりだね、喋るの」

「……ちょっと聞きたいことあんだけど」

「あー、篠原さんのことかな?
ちょっと待ってね。先に片付けちゃうね」



そうあっさり言うと、宮坂は片付けを続けた。



「よし、完了」



そう小さく声を出して。



「郁君おまたせ」



ってベンチで待つ俺に駆け寄ってきた。



「宮坂、乃亜に何言ったの?」

「乃亜? ああ、そっか。篠原乃亜ちゃんだもんね」

「ああ」



自然と名前で呼んでいた事がなんか恥ずかしくなって、俺は首の後ろをかいた。



「篠原さんとは少し話しただけだよ?」

「だから何を?」



そう俺が聞くと宮坂は小さく溜息を零して。
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