【完】TEARS−ティアーズ−
「最近の郁君、練習にも身が入ってないよね。
それを言っただけよ」
「別にそれが乃亜と何の関係があるわけ?」
「自主練もしなくなっちゃったし、ミーティングにも残らない。
そんな人が試合に出させてもらえるわけないじゃない」
「部活にはちゃんと出てるから問題なくね?」
「そんなのでいいの?」
ワントーン高くなった宮坂の声が、俺をイラッとさせた。
「俺は大学に行かないから、功績なんて必要ねぇし。
それなら、他の奴が試合に出た方がいいだろ」
「そんなこと考えてたの?」
「ああ」
「他の人の事も考えてたなんて……ごめんね。私勘違いしてたかも」
驚いた。
宮坂がそんなに素直に謝るなんて。
「なんか宮坂変わったな」
本当にそう思った。
だって今までの宮坂から“ごめん”なんて言葉聞いた事もない。
「別にっ。変わってなんてないけど」
そうフンッとした宮坂は、今までの知ってる宮坂で。
「あ、やっぱそっちの方が宮坂ぽいかもな」
なんて、俺は笑ってしまった。
なによ、それ。って宮坂は怒ったけど。
やっぱり、宮坂は偉そうな女ってイメージがあるから。
下手に出られると反応に困る。