【完】TEARS−ティアーズ−
「あのさ、宮坂。
乃亜ってすっげーバカなんだ」
「へ?」
「だから、言われた事は真に受けちまうし。
なかなか理解能力ないし」
ここまで言ったら、乃亜に怒られるかも。
そうは思いながらも、俺は続ける。
「ほんっとーに、面倒な女なんだ」
「い、郁君?」
「だから、ほっといてやってくんないかな?」
それが1番だと思った。
乃亜は、すぐ信じるくせに。
本当に理解能力がないんだ。
俺と付き合ってたことすらわかってないくらいだったし。
周りに何か言われれ面倒なことになりかねない。
今回みたいに。
俺も女心ってのが、あんまりわかってねぇから問題なんだけど。
女なんて面倒だよな。
だけど俺は乃亜とは、ちゃんと分かり合いたいんだ。
乃亜だけにはわかってもらいたいんだ。
「そっか……郁君、篠原さんに本気なんだね」
「ああ、だからごめんな」
そう言うと宮坂は軽く頷いて、笑った。
よし。
とりあえず着替えて乃亜と話に行こう!
そう思った時だった。
「あっ、郁君。ちょっとだけこうしててっ」
小声で言った宮坂は、俺の腕に手を絡めて来た。
一瞬なにが起こったのかわからなかった。