【完】TEARS−ティアーズ−


「あのさ、宮坂。
乃亜ってすっげーバカなんだ」

「へ?」

「だから、言われた事は真に受けちまうし。
なかなか理解能力ないし」



ここまで言ったら、乃亜に怒られるかも。

そうは思いながらも、俺は続ける。



「ほんっとーに、面倒な女なんだ」

「い、郁君?」

「だから、ほっといてやってくんないかな?」



それが1番だと思った。

乃亜は、すぐ信じるくせに。

本当に理解能力がないんだ。

俺と付き合ってたことすらわかってないくらいだったし。

周りに何か言われれ面倒なことになりかねない。

今回みたいに。

俺も女心ってのが、あんまりわかってねぇから問題なんだけど。

女なんて面倒だよな。

だけど俺は乃亜とは、ちゃんと分かり合いたいんだ。


乃亜だけにはわかってもらいたいんだ。



「そっか……郁君、篠原さんに本気なんだね」

「ああ、だからごめんな」



そう言うと宮坂は軽く頷いて、笑った。


よし。

とりあえず着替えて乃亜と話に行こう!


そう思った時だった。



「あっ、郁君。ちょっとだけこうしててっ」



小声で言った宮坂は、俺の腕に手を絡めて来た。

一瞬なにが起こったのかわからなかった。
< 319 / 371 >

この作品をシェア

pagetop