【完】TEARS−ティアーズ−
「え? 宮坂?」
「シー! 今だけでいいからっ」
そう言う宮坂は俺の顔なんて全く見てなくて。
宮坂の視線を追うと、そこには知らない男が居た。
「誰?」
小声で聞き返す俺に
「前に言わなかったっけ。
しつこく告白してくる男の子がいるって」
ああ、なんか聞いた気がする。
そういえば俺達が付き合ったのも、それでだったような。
「てか、まだつきまとわれてんの?」
「ううん、最近はなかったんだけど。
こっち見てるし、もう少しだけ……お願い」
そう言った宮坂の腕は微かに震えてて。
「わかった」
そう告げた瞬間。
俺の目に映ったのは、ボロッと涙を零した乃亜の姿。
え?
乃亜!?
俺の顔を見て、数回顔を横に振って。
そのまま走り出してしまった。
本当は追いかけたかった。
大きな声で『待てよ!』って言いたかった。
だけど、こんな状況で宮坂を置いていくわけにもいかないし。
「チッ」
そう小さく舌打ちだけしか、する事が出来なかったんだ。