【完】TEARS−ティアーズ−


そこへ近寄り、そっとカーテンを開けると、



「……いた」



そこに居たのは、走り回って捜した乃亜で。



「え? い、郁君!?」



目を真っ赤にして、ティッシュで鼻をかんでる乃亜で。



「捜すの疲れたぁ」



そう言ってベッドにドカッと座った俺。



「い、郁君?」



なーんて、弱々しい声出してんなよ。



「とりあえず、先に昨日の事は謝る。
ごめんっ!」



チラッと乃亜を見ると、眉毛を寄せて哀しそうな顔をしてて。



「で、さっきのは違うから。
宮坂とは何でもない。
これだけは信じて?」



そう言うと、俺から視線を落として。



「本当に?」



また俺を見る。

うんうん、と首を縦に振ると、乃亜の目にまた涙が溜まった。



ひとつひとつ丁寧に説明していく俺の話を聞きながら、乃亜は涙を流し続けて。

俺はその涙を何度も指ですくう。

それだけじゃ間に合わないくらいに、乃亜は泣いて。

こんなに泣かせてしまった事に、胸が痛くなった。



「あたしぃ、郁君が宮坂さんのところにっ、戻っちゃったんだって思ったぁっ」



泣きながらそう言った乃亜に、



「絶対ねぇよ」



そう言うと、また大粒の涙をボロボロ零して。



「あー、もう泣くなよ。
どうしていぃかわかんなくなるだろ」



それでも、涙は止まらない。



「どうしたらいぃ?」

< 322 / 371 >

この作品をシェア

pagetop