【完】TEARS−ティアーズ−
そう聞いたら、真っ赤な顔で
「……ギュッてして欲しい」
小さな声で呟いた。
なっ!
ええ!?
そんな事を言われた俺は、顔がカーッて熱くなった。
「お、俺着替えてねぇし。
汗臭いからっ」
これは本当で。
俺はまだサッカーのユニフォーム姿だし。
朝練したし。
まじ汗臭ぇし。
「それでもいいもんっ」
なんて……可愛い事いってんじゃねぇよ、バカ。
乃亜の言うギュッとってやつをしようと思った……けど、躊躇した俺が居て。
だって恥ずかしいだろ!
そんなのって流れで、こう……なるもんじゃねぇの!?
それを言われて、はい! みたいなのなんて……出来るわけねぇだろっ!!
「郁君……」
だーーー!
んな甘ったるい声出すな!
「してくれないの?」
って誘ってんじゃねぇよ!
「郁…く…」
抱きしめた。
乃亜が、また俺の名前を呼んで。
俺の気持ちをこれ以上高ぶらせないように。
その前に抱きしめた。
のに!!
俺の背中に回った乃亜の腕に、俺のドキドキはハンパない。