【完】TEARS−ティアーズ−
「あはっ、郁君の心臓ドキドキしてる」
「うっせー」
「あたしも、ドキドキしてるよ?」
少し開いた隙間から、ほら? って俺を見上げた乃亜。
「聞いてみる?」
って!!
こ、こいつバカなんじゃねぇの!?
お前の心臓っつったら……あれだろ!
何が聞いてみる? だ。
あー、もう嫌んなる。
まじで無理だ。
有り得ぇ!
乃亜の肩に、額をつけて、大きな溜息。
「郁君?」
そう俺の名前を呼ばれ、チラッと乃亜を見た。
乃亜も俺の方を向いてて。
--チュッ
一瞬の、触れたか触れないか、そんなキスをした。
「いいい、郁君!?
こんな、とこでっ…」
何するの! とでも言いたげな顔。
それは俺のセリフなんだけど。
俺より、お前の方がよっぽど大胆だから。
そんなめちゃくちゃな乃亜に、俺は笑って言ったんだ。
「バーカ」
そうしたら乃亜は、恥ずかしそうに笑ってた。