【完】TEARS−ティアーズ−


待ち合わせ時間から15分過ぎた頃。



「……またかよ」



俺は小さく溜息と共に呟いた。



沢木郁。

もうすぐ卒業して、就職する予定の高校3年生。



ポケットに入れた携帯が着信を知らせる。

表示された名前に、やっぱりな……そう心の中で呟いて、通話ボタンを押した。



「もしもし、乃亜?」



電話は、俺の彼女の乃亜からで。

今、待ち合わせに遅れている相手。



《郁君ー、ごめんなさぁい!》



息切れしながら、泣きそうな声を出している乃亜の表情は想像がつく。



「……また遅刻かよ」

《ううう……》

< 336 / 371 >

この作品をシェア

pagetop