【完】TEARS−ティアーズ−
--コンコン
控えめに車の窓を叩いた。
ハッとした顔をした高峰さんは、静かに窓を開ける。
「南さんでしたっけ?」
「うん。高峰さんですよね?」
「はい」
「乃亜なら、だいぶ前に帰りましたよ。入れ違い?」
「……あー、いえ」
言葉を濁し、私から視線を逸らす高峰さんに首を傾げた。
なに?
何かあったのかな?
「乃亜ちゃんに振られてしまいました」
は!?
その言葉に、私は固まってしまう。
いや、だって。
まさか、こんな短時間で、こんな気まずい話しを聞かされるなんて思ってなかったから。
だって、私は乃亜が先に帰った事だけを伝えようとしただけだもん。
「こんな事、突然言っても困るだけですよね。
すみません」
「いや、別に……」
「こんな歳になって振られて落ち込むとか、かっこわるいですよね」
フッと笑った高峰さんの顔が寂しそうで。