【完】TEARS−ティアーズ−
「んん……」
目を開けると、家の天井が目に入る。
あー、いつの間に寝てたんだろう。
さっきよりも軽くなった頭と体。
やっぱり睡眠は大事だと思った。
「……いい匂い」
そう呟くと、お腹がグーとなった。
人間の体はよく出来ているもので。
調子が良くなってくるとお腹も空くようになっているんだ。
「あ、起きた?」
南さんがドアを開け、顔を覗かすと、その匂いはもっと強くなって。
「ご飯、食べれる?」
そう聞いた南さんが運んできたのは、お粥。
起き上がり、ベッドの上でそれを食べ始めた。
「あ、……美味しい」
「よかったぁ。てか、高峰さん、あの炊飯器使ってないでしょう」
あの炊飯器?
あの炊飯器って、どの炊飯器だろう?
考えた僕に。
「高峰さんの家の炊飯器」
そう言われて、素直に答えた。
「一度も使ったことないです」
「だろうねぇ」
「どうしてわかったんですか?」
「炊飯器開けたら中に説明書入ってたもん」
そうクスクスと南さんが笑う。
ああ、そういえば。
炊飯器を買った時、なくさないようにって説明書を中に入れてたかもしれない。