【完】TEARS−ティアーズ−
“日替わり弁当”を頬張りながら、
「実はね。あの子なんだよ、前に言ってた女の子!」
と、突然話し出した。
「あの子?」
「さっきの食券あげた女の子だよ」
「ああ。何あの女が好きなわけ?」
シレッと聞いた俺の一言に、
「うんぐっふっ」
大口で食べたご飯を喉に詰まらせた。
「きたねぇなぁ」
「郁がそんなストレートに聞くから悪いんじゃん!」
「ストレートに聞かなきゃ、どう聞くんだよ」
「もっとさ、こうオブラートに包んでよっ!」
くそ面倒臭ぃ事言いやがって。
なんだよ、オブラートって。
そんなもんに包まなきゃダメな話なら最初からすんなっつぅの。
「それにさ、俺言ったことあったでしょ?」
「何を?」
「乃亜ちゃんの事いいなー、って思ってるって」
そだっけ?
んな話聞いたかなぁ?
俺を睨むように見つめる正宗に気付いて、話を先に進めた。
「で、どこがいいわけ?」
そう言うと、正宗は顔を真っ赤にして俯いた。
お前は、恋する乙女かよ!
なんて突っ込みたかったけど、友達の恋を馬鹿にするのはな……と思い留まってみる。