【完】TEARS−ティアーズ−
「ね、郁。
今度の土曜日って行くとこ決めちゃった?」
そう言って、俺の顔を覗き込むように見る正宗。
そういやぁ、今度の土曜の午後は久々に部活が休みだったな。
正宗と出かける約束してたっけ。
「別に何も決めてねぇけど」
「うっし! じゃあ、俺に任しといて!」
大袈裟なくらいにガッツポーズを決めた正宗を、変に思い聞いてみた。
「何かあるのか?」
「え……。
あー、うん。買い物、買い物に付き合ってよ!」
「買い物? 何買うんだよ?」
「うぇ? あー、その時決める!」
はぁ?
意味わかんねー奴だなぁ。
まぁ正宗が変なのは、いつものことだし。
だから、俺はあまり気にせず『んー』とだけ頷いんだ。
だけど、それが間違いだった。
あんなに篠原の話をしてて、急に土曜の午後の話になって。
なんで気付かなかったんだよ、俺……。