【完】TEARS−ティアーズ−


「ね、郁。
今度の土曜日って行くとこ決めちゃった?」



そう言って、俺の顔を覗き込むように見る正宗。


そういやぁ、今度の土曜の午後は久々に部活が休みだったな。

正宗と出かける約束してたっけ。



「別に何も決めてねぇけど」

「うっし! じゃあ、俺に任しといて!」



大袈裟なくらいにガッツポーズを決めた正宗を、変に思い聞いてみた。



「何かあるのか?」

「え……。
あー、うん。買い物、買い物に付き合ってよ!」

「買い物? 何買うんだよ?」

「うぇ? あー、その時決める!」



はぁ?

意味わかんねー奴だなぁ。


まぁ正宗が変なのは、いつものことだし。

だから、俺はあまり気にせず『んー』とだけ頷いんだ。


だけど、それが間違いだった。


あんなに篠原の話をしてて、急に土曜の午後の話になって。

なんで気付かなかったんだよ、俺……。
< 46 / 371 >

この作品をシェア

pagetop