【完】TEARS−ティアーズ−
「乃亜が乗らないなら、私もやめとこうか?」
「ううん、大丈夫だよ!
南ちゃんは乗ってきて?」
篠原は絶叫系が苦手だったらしい。
しかも、それを思い出したのはジェットコースターに乗った後。
普通乗る前に気付くだろ! って心の中で突っ込んだけど。
俺もジェットコースターに乗っただけで休憩してるから、言える立場じゃない。
「えー? 本当に乗らないの?」
「俺はもういいって。
乗りたいやつ好きなだけ乗って来いよ。
ここで待ってるから」
隣でブーブー言う正宗に、グッタリしたまま答えた。
小さな子供用に作られているからか、乗り物の衝撃は“恐い”んじゃなくて“痛い”。
ガンガンと頭を打ち過ぎたせいか、軽く頭痛するし。
「本当に大丈夫?
気持ち悪くない?」
「うん。休んでれば平気だよ。
それに南ちゃん乗らなきゃ、正宗君1人になっちゃうし」
「正宗は1人でも乗ってそうだからいいのよ。
私は乃亜の方が心配だもの」
「南ちゃん……」
南の言葉に、篠原は苦笑い。
確かに南の言い方は酷すぎる、けど言ってる事は間違ってない。
正宗なら1人でも平気だろ。
「まぁ、郁もいるし、大丈夫かな。
あ、そうよね。慣れるのにちょうどいいじゃない!」
「ちょっ、南ちゃん!?」
「よし。じゃあ、乗ってくるね!
郁、乃亜の事よろしくねー」
「へ?」
意味不明な言葉を残し、南と正宗はコーヒーカップへと向かって行った。
慣れ?
篠原の事をよろしく?
どういう意味だ?
疑問には思ったけど。
その場に残された篠原と俺は、あえて話すこともなく。
順番に並んでいる正宗と南を眺めていた。