【完】TEARS−ティアーズ−


「皆の数貰ったのにぃ」



見上げながら、ポソッと呟く。


あたしが頬に手なんか当てちゃったから、紐を持つ手がゆるんじゃったんだ。



「え? それって俺らの分だったの?」

「うん、そうだよ?」

「ぶはっ! 篠原って変な女」



変な女って……あたし?



「俺、風船なんかいらねぇよ」

「え? いらないの?」

「うん、いらね」

「そっかぁ。あ、でも南ちゃんは…」

「いや、南もいらねぇだろ」

「……そっかぁ」



ションボリするあたしの持つ風船をポンッと叩くと。



「うん。まぁ、正宗は喜ぶんじゃね」



そう笑ってくれた郁君の笑顔に、また胸がドキンッて音をたてた。
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